icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学34巻5号

1983年10月発行

文献概要

特集 受容・応答の膜分子論

温度感覚の分子機構

著者: 今栄康雄1 中岡保夫2

所属機関: 1名古屋大学理学部分子生物学研究施設 2大阪大学基礎工学部生物工学科

ページ範囲:P.368 - P.375

文献購入ページに移動
 人間を含め,生物の生活活動は狭い温度範囲に限られるので,多くの生物が温度変化を刺激として感知し,それに対応する能力を持っている。高等動物の温度感覚は,触覚や痛覚といった体性感覚の1つであって,温度感覚受容器は体表全体に分布し,味覚や視覚のように分化した受容器を一般に持たない。ただ,昆虫では触角に温度感覚が局在しているという報告1)があるのと,ハブやガラガラヘビは,目と鼻の間にある眼面小窩(pit)が赤外線受容器であること2,3),が例外である。多くの生物で,局在した温度感覚器を持たないことは,逆に,体の特定部位のみの温度測定では,生存に不十分であることを意味しているのかも知れない。
 高等動物における温度感覚機構の研究は,特殊化された感覚器を持たないこと,温度が細胞の多くの機能に非特異的に作用してしまうこと,などの理由によって,生存に必須な感覚機構の1つでありながら,解析が進んでいない。本総説では,分子レベルでの解析が比較的進んでいる,バクテリアとゾウリムシの温度感覚機構を中心に,最近の研究を紹介したい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?