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文献詳細

雑誌文献

生体の科学35巻1号

1984年02月発行

文献概要

解説

植物細胞のHポンプ

著者: 三村徹郎1 新免輝男1 田沢仁1

所属機関: 1東京大学理学部植物学教室

ページ範囲:P.39 - P.46

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 I.起電性Hポンプ
 1)代謝依存性電位
 植物細胞(ここでは真核性の緑色植物細胞と菌類をいう)の原形質膜電位(外液に対する細胞質の電位)は,動物細胞が示す-80mV前後の値に比べてかなり大きく,-150〜-250mVになることが多い。一方,細胞膜を介してのKの拡散電位は-100〜-180mV程度であり,その差50〜100mVはイオンの不均等分布のみでは説明できない(表1)。Slayman(1965)37)はアカパンカビの,北里(1968)16)は車軸藻の膜電位が,CNやNaN3,DNPのような呼吸阻害剤で大きく脱分極することを見出し,植物細胞の膜電位には代謝依存性の成分があることを証明した(図1)。そしてこの成分は能動的にイオンを輸送する起電性イオンポンプにより形成されているものと考えられるようになってきた42)。呼吸依存性電位の存在は,藻類や菌類から高等植物に至る広範囲の植物細胞において証明されており,いずれの場合も100mV近い大きな値を示すことが多い7,11,23)
 一方,緑色植物細胞では,光による膜電位の変化が古くから知られていた(図2)1,25)。この現象は有効波長や阻害剤の実験から,光合成の関与した起電性ポンプの活性化による膜電位変化と考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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