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実験講座
培養細胞の全載標本観察法
著者: 会津清英1
所属機関: 1東北大学医学部解剖学第2講座
ページ範囲:P.59 - P.65
文献購入ページに移動 1945年にPorterら25)が,ニワトリ胚からの培養線維芽細胞を四酸化オスミウムの蒸気で固定後,五酸化燐を置いた容器内で乾燥して,いわゆる全載標本を直接電子顕微鏡で観察した。この標本で,核,核小体およびミトコンドリアなどを確認すると共に,lace-like reticulumの像を得たが,これは後の小胞体の発見へとつながる。しかし,この観察方法は,その後花々しく発展した超薄切片法の陰にかくれてあまり広まらなかった。それは標本乾燥の段階での細胞の著しい変形や,電子線の不十分な透過能力などのためであり,またPorterとStearns26)によれば,電子顕微鏡というよりは,当時の培養手技上の制約からであった。それから30年を経てBuckleyとPorter5,6)は,再びこの全載標本観察法によってすばらしい電顕像を示した。すなわち,全載標本とした結合組織性培養細胞をAnderson2)が開発した臨界点乾燥法により乾燥し,試料傾斜装置を備えた超高圧電顕で立体的に観察したのである。そして,これまで超薄切片法では,その切片の薄さ故に,または包埋剤とのコントラストがないために見過ごされてきた細胞質の三次元的網目構造に注目し,その意義を強調した。この網目構造は,続いて行われたWolosewickとPorter38〜40)の多くの対照実験によってその存在がゆるぎないものとなってきている。
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