icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学35巻2号

1984年04月発行

文献概要

特集 哺乳類の初期発生

マウス初期胚における細胞表面分化とその役割

著者: 白吉安昭1 竹市雅俊1

所属機関: 1京都大学理学部生物物理学教室

ページ範囲:P.96 - P.101

文献購入ページに移動
 胚発生において,細胞表面は多くの興味と関心を集めてきた.それは,細胞表面が環境および他の細胞との境界面に位置しており,環境との相互作用や細胞間認識の仲介となっているはずだからである.細胞表面に対する抗体が,胚発生そのものに影響を与えたり1〜3),胚の細胞分化に伴って細胞表面の物質や構造体が,質的・量的に変化を示すことなどが知られており4〜6),これらは胚発生において細胞表面が何らかの重要な役割を演じていることを示唆している。もし,細胞表面が胚発生に果たしている役割を明らかにすることができれば,胚発生のしくみを解くための1つの鍵を手に入れることにもなろう。
 哺乳類の胚は調節卵であって,割球の発生は,位置情報や他の割球との相互作用などに代表される環境要因によって調節されていると考えられている。一方,古典的な発生学の研究は,細胞質や細胞表層にある極性(不均一性)が,胚の発生と密接に関連していることを示している。これまで哺乳類の胚では,はっきりとした極性は見出されていなかったが,レクチンの細胞表面の結合部位に関する研究から,細胞表面に極性が存在していることが明らかになった7)。この極性は,発生の特定の時期に出現してくるが7),細胞表面の一種の分化としてとらえることも可能である。この極性の形成(polarization)の発見と発生工学的手法の発達によって,新しい観点からの哺乳類の胚発生の研究が可能となった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?