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文献詳細

雑誌文献

生体の科学35巻2号

1984年04月発行

特集 哺乳類の初期発生

マウス初期胚と組織適合性抗原

著者: 多屋長治1 森脇和郎1

所属機関: 1国立遺伝学研究所細胞遺伝部

ページ範囲:P.109 - P.115

文献概要

 哺乳類が全世界に適応放散する過程で,非常に重要な役割を果たした形質の一つに,胎性(viviparity)という生殖形態のあることは言うまでもない。胎性とは,体内受精を行う動物において胚が母体内にとどまり,母親からの栄養補給を受けながら発育する生殖様式の一つである。胚は母体の輸卵管の一部が変化して生じた子宮の壁に着床し,胎盤(placenta)を形成して母体との組織的連絡をはかり,そこで栄養の補給,老廃物の排出などを行う。胎性は様々な脊椎動物で認められるが,哺乳類において初めて,複雑で高度に発達した胎盤系を作り上げてきた。
 哺乳類が胎性という生殖様式を完成するに当たって,乗り越えなければならない重要な問題がいくつかあったと考えられる。その一つは,胎児が母親の免疫的拒絶反応からいかにして逃れるのかという問題である。実際,胎児は母親および父親由来の両方の遺伝子から構成されているので,母体にとって胎児は一種の異物(非自己)である。従って,胎児が父方の同種移植抗原(allo-transplantation antigen)を発現するならば,母体はそれを認識して,免疫反応を誘起し,胎児を傷害することになる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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