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文献詳細

雑誌文献

生体の科学35巻2号

1984年04月発行

文献概要

特集 哺乳類の初期発生

哺乳類初期胚の放射線生物学

著者: 土門正治1

所属機関: 1東京医科歯科大学歯学部放射線学教室

ページ範囲:P.136 - P.139

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 国際連合原子力放射線の影響に関する科学委員会の1977年の報告書は,核爆発からのフォールアウト,放射性物質を用いた商品,医療放射線,原子力発電による環境および職業的被曝などから予測される低線量の放射線被曝の影響として,放射線の発癌作用,胎児期に及ぼす放射線の影響,放射線の遺伝的影響の三つを分類している1)。母体の被曝による,出生児の奇形誘発および悪性腫瘍誘発の感受性が高いことを結論する疫学的研究により,社会的関心が胎児被曝の問題に集められている。哺乳動物による実験研究のテーマは,胎児被曝による障害発生の危険度推定に必要なデータを提供することである。
 哺乳類,とくにマウスによる実験研究により,母体の子宮壁に着床する以前の初期胚,着床後の胚の器官形成期および胎仔の成長期に対する放射線影響として,それぞれ着床前後の胚致死,諸器官の奇形誘発および新生仔の死亡効果が報告されている。これらの効果は細胞致死効果に起因する。生き残った細胞が対象となる発癌,遺伝的障害については,胎仔被曝の実験研究は少ない。また,ヒトの胎児被曝の危険度推定に寄与する線量効果関係の洞察に基づいた定量的研究が少ないことを国連科学委員会は指摘している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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