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実験講座
脱包埋切片による細胞形態の観察法
著者: 近藤尚武1
所属機関: 1新潟大学医学部第3解剖学教室
ページ範囲:P.149 - P.154
文献購入ページに移動 形態学の発展は観察方法の開発改善に大きく左右されてきた。そのことは光学顕微鏡,そして電子顕微鏡の発達により観察しうる対象が変貌し,情報量の著しい増大となった事実で明白である。その電子顕微鏡が実用化されて30有余年,その前半は信頼のおける安定した観察技法の開発の時期であった。固定剤や包埋剤の開発,切片作製法の工夫・改良がなされて,1960年代後半には切片による透過電顕的観察法は安定期を迎えた7)。その完成された方法とは,化学固定された試料をエポキシ樹脂に包埋し,薄切後にアルカリ性重金属塩でいわゆる電子染色を施して鏡検するというものである。そして像としてのコントラストは,主に試料に含まれた固定剤のオスミウムと染色に使用されたウランと鉛との電子散乱能に依存しているのである。ところが,鏡検時に切片のないグリッド部と切片部との明るさの相違から明らかなごとく,包埋剤のエポキシ樹脂自身もかなりの電子散乱能をもっているのである。この事実から,もし試料中に包埋樹脂と同じ電子散乱能をもつ物質で出来た構造が存在し,それが電子染色されにくいものであるなら,その構造物は明瞭な形として確認され難いことになるであろう。そして,それらは従来の電顕観察の対象から除外されていた可能性が考えられる。ここに,無包埋状態での電顕観察の必要性が出てくるわけである。
最近,無包埋状態の観察のためにいくつかの方法が考案された。
最近,無包埋状態の観察のためにいくつかの方法が考案された。
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