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Harry Grundfest教授を偲ぶ
著者: 杉晴夫1
所属機関: 1帝京大学医学部生理学教室
ページ範囲:P.155 - P.158
文献購入ページに移動 米国コロンビア大学名誉教授Harry Grundfestは1983年10月10日朝,ニューヨークのSt.Lukes Hospitalで心臓発作のため79歳の生涯を閉じられた。Grundfest教授は1904年ロシアのミンスクに生まれ1913年米国に移住し,コロンビア大学を卒業して1930年にPh.D.の学位を得たのち,1935年にRockefeller InstituteにおいてGasserらとともに神経軸索の直径と興奮伝導速度との間の関係の研究をはじめとする神経生理学の創始者の一人として研究活動を開始した。コロンビア大学新聞の追悼記事にも,彼が神経生理学の分野で最初にoscilloscopeを用いた一人であることが特筆されている(図1)。1945年以降はコロンビア大学において1972年にretireするまで多くの研究者とともに神経,シナプス,興奮収縮連関の各分野にまたがる広汎かつ生産的な研究活動を行った。Grundfest教授の研究室で1〜2年間仕事をした外国からの研究者は日本人が群を抜いて多く20人に及んでいる。これはGrundfest教授が我が国の研究者の能力を非常に高く評価していたことにもよるが,このように空前絶後ともいえる多数の日本人研究者の留学を可能としたのは,彼が多額の研究費を多年にわたって獲得し続け,これを背景として研究室のメンバーに自由に研究課題を選んで仕事をする自由を与えたことによるものであろう。
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