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文献詳細

雑誌文献

生体の科学35巻3号

1984年06月発行

文献概要

特集 神経科学の仮説

シナプス小胞仮説

著者: 久野宗1

所属機関: 1京都大学医学部第2生理学教室

ページ範囲:P.176 - P.181

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 Ⅰ.歴史的背景
 シナプスを形成する神経末端の内部に直径20〜50nmの小胞が多数存在することは,1954年4月の米国解剖学会45,46)および生理学会14)において3グループの研究者によって独立的に報告された。その時,De Robertis & Bennett14)はこの構造をシナプス小胞(synaptic vesicle)と呼び,これらの小胞は時に神経終末端からシナプス間隙に突出する像を示すことを報告している。この3編の発表はシナプス小胞に関する学術報告としては最初のものである。しかし,シナプス小胞は1953年11月のPoconoの電顕学会で配布されたLKBマイクロトームの広告に掲載された電顕写真に偶然示されており,これは網膜のシナプス像でF. S. Sjöstrandによって得られたものと言われている(H. S. Bennett教授からの私信)。Sjöstrandはこの構造とシナプスとの関連に特に注目することなく,その時の学会抄録50)にも単に小顆粒(minutegranules)とだけ記載した。前述の3編の発表もシナプス小胞の機能的意義に関しては触れていないが,1954年5月に投稿されたDe Robertis & Bennett15)の論文には,シナプス小胞は神経終末端膜を貫通してその内容物(伝達物質)をシナプス間隙に放出するのであろうと示唆している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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