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特集 神経科学の仮説
シナプス小胞仮説
著者: 久野宗1
所属機関: 1京都大学医学部第2生理学教室
ページ範囲:P.176 - P.181
文献購入ページに移動シナプスを形成する神経末端の内部に直径20〜50nmの小胞が多数存在することは,1954年4月の米国解剖学会45,46)および生理学会14)において3グループの研究者によって独立的に報告された。その時,De Robertis & Bennett14)はこの構造をシナプス小胞(synaptic vesicle)と呼び,これらの小胞は時に神経終末端からシナプス間隙に突出する像を示すことを報告している。この3編の発表はシナプス小胞に関する学術報告としては最初のものである。しかし,シナプス小胞は1953年11月のPoconoの電顕学会で配布されたLKBマイクロトームの広告に掲載された電顕写真に偶然示されており,これは網膜のシナプス像でF. S. Sjöstrandによって得られたものと言われている(H. S. Bennett教授からの私信)。Sjöstrandはこの構造とシナプスとの関連に特に注目することなく,その時の学会抄録50)にも単に小顆粒(minutegranules)とだけ記載した。前述の3編の発表もシナプス小胞の機能的意義に関しては触れていないが,1954年5月に投稿されたDe Robertis & Bennett15)の論文には,シナプス小胞は神経終末端膜を貫通してその内容物(伝達物質)をシナプス間隙に放出するのであろうと示唆している。
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