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文献詳細

雑誌文献

生体の科学35巻4号

1984年08月発行

特集 ゲノムの構造

がん遺伝子の構造

著者: 豊島久真男1 山本雅1

所属機関: 1東京大学医科学研究所制癌研究部

ページ範囲:P.288 - P.294

文献概要

 がん遺伝子の定義として,「特定の蛋白質をコードし,その蛋白質は細胞の発がんのみでなく,がんとしての性質の維持にも働いているもの」とした1)。この定義に従えば,急性発がん性のレトロウイルスで見出されて来たがん遺伝子は,そのカテゴリーに入る。しかし,同じレトロウイルスのLTR(long terminal repeat)はプロモーターやエンハンサーを含み,細胞をがん化することもあるが,そのがん化は自らの遺伝子産物によっておこるのではなく,細胞の特定の遺伝子の活性化によると考えられるため,これはがん遺伝子には分類しない。ところで,上記レトロウイルスのがん遺伝子は,正常細胞に感染したとき,直ちに細胞をがん化へ導くし,また,その遺伝情報の発現を止めたとき—例えば,がん遺伝子の温度感受性変異株で,細胞培養温度を非許容温度に上昇させたとき—細胞は正常状態に戻る。従って,これははじめの定義によく合致する。しかし,レトロウイルスで発見されたがん遺伝子に対応する細胞の遺伝子は,そのままでは細胞をがん化する能力はもっていない。これは一応細胞がん遺伝子(c-onc)と呼ばれ,先のウイルスがん遺伝子(v-onc)と区別されているが,さらにそのものには発がん性はないが,発がん性をもつ潜在能力のある遺伝子という意味でプロトオンコジン(proto-onc)とも呼ばれている2)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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