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文献詳細

雑誌文献

生体の科学35巻5号

1984年10月発行

文献概要

特集 中枢神経系の再構築

神経内分泌調節と脳移植

著者: 新井康允1 松本明1 小山内実2

所属機関: 1順天堂大学医学部第2解剖学教室 2東京都老人総合研究所生物学部・プロジェクト部

ページ範囲:P.330 - P.337

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 胎生期や新生期のラットやマウスの脳組織を脳内に移植することが可能になり,脳移植の脳機能に与える影響がいろいろなパラメーターを用いて研究されるようになって来た。脳組織は血液脳関門によって保護され,脳脊髄液に浸っている特殊な環境にあるので,移植が難しいとされていた。しかし,新生ラットの視床下部1)や扁桃体組織を腎皮膜下に移植した場合,かなりの数のニューロンが生き残ることが判明し,血液脳関門外でも中枢神経系のニューロンが生存可能であることがわかった。一方,移植環境としての脳は他の組織と比較して,むしろ良い方である。血液脳関門がある程度移植組織と免疫系を隔離する役割をはたすし,脳脊髄液も組織培養における培養液のような働きをしていると考えられている。したがって,脳組織の脳内移植はむしろめぐまれた状況にあるわけである。
 神経内分泌学の展開の歴史を辿ってみると,卵巣2,3)や甲状腺4)や下垂体5)のような内分泌器官の組織の脳内移植の実験がかなり古くから行われ,それぞれ神経内分泌調節機序の解析に大いに役立って来ている。卵巣と甲状腺の場合は,性ホルモンや甲状腺ホルモンの脳に対するフィードバック機構の解明に貢献したし,下重体の脳内移植の場合は,下垂体前葉ホルモンの放出を調節する脳ホルモンの存在の一つの証明として意義あるものであった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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