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文献詳細

雑誌文献

生体の科学35巻5号

1984年10月発行

文献概要

特集 中枢神経系の再構築

小脳出力線維の再生

著者: 川口三郎1

所属機関: 1京都大学医学部脳神経研究施設生理

ページ範囲:P.348 - P.355

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 嗅上皮にある嗅細胞は神経細胞であるが,例外的に成熟した動物においても分裂して再生する1)。小脳組織でも発生段階で神経細胞が分裂増殖する時期にはX線照射によって一部の神経細胞を死滅させても,失われた細胞は残りの細胞の分裂増殖によって補充されるという2)。こうした例外を除けば,死滅した神経細胞が残余の神経細胞の分裂によって補充されることはない。一方,脳の一部を取って別の個体の脳に移植すれば,移植片は必ずしも変性に陥るわけではなく,場合によっては宿主の脳の中で生長する。たとえば,ラットの胎児から未分化な小脳を取り出し,幼弱ラットの大脳皮質に移植すると,移植片は宿主の大脳皮質の中で分化を進め,部分的には正常な小脳皮質の構造をとるようになる3)。したがって,脳損傷や老化に伴って死滅した神経細胞をこのような移植によって補充することができるようになるという可能性も全く無いとは言えないであろう。実際,老齢ラットの線条体に移植されたラット胎児の黒質は宿主の線条体と神経結合をつくり,それは機能的にも活動性を示すことが示唆されている4)
 哺乳動物の中枢神経系で神経細胞の一部分である軸索が切断された場合,その軸索は再生するであろうか。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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