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文献詳細

雑誌文献

生体の科学35巻5号

1984年10月発行

文献概要

解説

精子の運動開始

著者: 森沢正昭1

所属機関: 1東京大学海洋研究所海洋生物生理部門

ページ範囲:P.366 - P.376

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 魚やウニなどの精液を精巣や輸精管から採取し,そのままスライドグラスにのせて顕微鏡で観察すると,精子は全く動いていない。このことから精子は雄の体内では運動を停止していると考えられる。魚,ウニなど体外受精を行う種では,精液が海水や淡水に放精され,哺乳動物など体内受精を行うものでは雌の生殖道に放出されると,何億という精子が一瞬に,しかもいっせいに運動を開始し,卵に向かって泳ぎだす。この精子の運動開始はまさに劇的である。顕微鏡下にこの変化をみるとき,科学者でなくとも好奇心の旺盛な人なら,このような静から動への変化がなぜおこるのだろうかと思うにちがいない。また,精子の運動開始の研究は未開拓な分野でもあり,この機構の解明は細胞運動の研究にたずさわる人々にとって興味ひかれる問題である。
 ここでは筆者らがこの数年とり組んできて,最も詳細な研究が進んでいる魚類を中心として,精子運動開始機構について述べる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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