文献詳細
解説
文献概要
魚やウニなどの精液を精巣や輸精管から採取し,そのままスライドグラスにのせて顕微鏡で観察すると,精子は全く動いていない。このことから精子は雄の体内では運動を停止していると考えられる。魚,ウニなど体外受精を行う種では,精液が海水や淡水に放精され,哺乳動物など体内受精を行うものでは雌の生殖道に放出されると,何億という精子が一瞬に,しかもいっせいに運動を開始し,卵に向かって泳ぎだす。この精子の運動開始はまさに劇的である。顕微鏡下にこの変化をみるとき,科学者でなくとも好奇心の旺盛な人なら,このような静から動への変化がなぜおこるのだろうかと思うにちがいない。また,精子の運動開始の研究は未開拓な分野でもあり,この機構の解明は細胞運動の研究にたずさわる人々にとって興味ひかれる問題である。
ここでは筆者らがこの数年とり組んできて,最も詳細な研究が進んでいる魚類を中心として,精子運動開始機構について述べる。
ここでは筆者らがこの数年とり組んできて,最も詳細な研究が進んでいる魚類を中心として,精子運動開始機構について述べる。
掲載誌情報