文献詳細
文献概要
特集 細胞毒マニュアル—実験に用いられる細胞毒の知識 神経系に作用するもの 軸索・興奮性膜作用薬
バトラコトキシン(矢毒カエル毒)
著者: 徳山孝1
所属機関: 1大阪市立大学理学部化学教室
ページ範囲:P.412 - P.413
文献購入ページに移動 南米コロンビア,サンジュアン川,サイジャ川流域に棲息する矢毒蛙,Phyllobates aurotaeniaおよびP. Terribirisの皮膚抽出物より得られた毒成分の一つである。バトラコトキシンはLD50,2μg/Kg mice s. c. に示されるように,非常に強い神経毒であって,明らかに心臓に作用して不整脈,心臓停止に至らしめる。化学構造式(1-1)に示されるように,ステロイド系アルカロイドに属する。ステロイド部分には,強心配糖体類と共通した構造のほかに,篭型骨核を持つなど特異な構造を有するが,とりわけ20-α-2,4-ジメチルピロール-3-カルボン酸エステルであることは大きな特徴である。バトラコトキシンの強い毒性の発現はこの部分によると考えられる。すなわちバトラコトキシニンA,毒成分の一つで,ステロイド塩基部自身(1-2)の毒性はLD50,1,000μg/kgであり,このカルボン酸部を種々変換したものの毒性が,ほぼ両者の間に分布することから明らかである。20α-2,4,5-トリメチル-3-ピロールカルボン酸エステルの場合,バトラコトキシンの毒性の2倍という値が得られた。なかでも20-α-安息香酸エステルがバトラコトキシンとほぼ同程度の毒性ならびに生理活性を示すことが見出されたのは,試薬自身の安定化,部分合成の容易さからも極めて興味深い。
掲載誌情報