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文献詳細

雑誌文献

生体の科学35巻6号

1984年12月発行

文献概要

特集 細胞毒マニュアル—実験に用いられる細胞毒の知識 神経系に作用するもの 神経終末作用薬

β-ブンガロトキシン

著者: 阿部輝雄1

所属機関: 1新潟大学脳研究所神経化学部門

ページ範囲:P.432 - P.434

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 ■構造と性質
 β-ブンガロトキシンは,α-ブンガロトキシンと同様に,アマガサヘビ(Bungarus multicinctus)粗毒中に存在する神経毒素である。分子量21,500の塩基性(等電点9.5)蛋白質で,ホスホリパーゼA2活性を有する。この酵素活性にはCa2+が必須である。1Mのβ-ブンガロトキシンあたり1MのCa2+が結合し,そのKdは1.5×10−4Mである。他の2価の金属イオンはほとんど無効である。蛇毒中に存在するものも含めて,ホスホリパーゼA2は一般に神経毒性が弱いが,β-ブンガロトキシンのマウス1匹あたりの致死量は0.2μg程度であって,きわめて強い神経毒性を示す。
 β-ブンガロトキシンは120残基のA鎖と60残基のB鎖から成っており,両者はS-S結合で結ばれている。A鎖およびB鎖の一次構造を図1に示す。A鎖は,他の蛇毒および膵臓のホスホリパーゼA2に類似した一次構造を持ち,β-ブンガロトキシンのホスホリパーゼA2活性は,おそらくA鎖によって発揮されているものと考えられる。A鎖のN末端から48番目に位置するヒスチジン残某基は他のホスホリパーゼA2にも共通しており,活性中心の一部を成している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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