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特集 細胞毒マニュアル—実験に用いられる細胞毒の知識 神経系に作用するもの シナプス後膜作用薬
抗コリンエステラーゼ剤
著者: 野々村禎昭1
所属機関: 1東京大学医学部薬理学教室
ページ範囲:P.461 - P.463
文献購入ページに移動運動神経終末および自律神経コリン作動性神経終末の伝達物質としてアセチルコリン(ACh)が放出される。これらの神経終末と効果器の間隙,および効果器上にはAChの分解酵素であるコリンエステラーゼ(ChE)が存在し,放出されたAChをただちに分解する。抗コリンエステラーゼ(抗ChE)といわれる一群の薬物は,ChEの活性中心部に結合して,AChとChEの結合を妨害しChEによるACh分解を抑制し,効果器官部位にAChを蓄積させ,結果としてACh作用を増強,持続させる作用がある1)。
抗ChEは構造と作用持続の点で2群に分けられる。第1群はChEに結合してもすぐに加水分解され可逆性に作用するもので眼科領域での治療薬,骨格筋神経筋接合部でのACh作用持続のための実験薬として用いられる。これらはAChと類似の構造をもつ。第2群は有機リン化合物といわれ,ChEとの結合は強固で加水分解には長時間かかり,不可逆的に作用するといってよい。昆虫類では卵,幼虫にも作用し,殺虫剤の農薬として用いられる毒物である。第1群のものはChEに対して特異的であるのに対し,第2群はChEのみならず広くセリン,チオール酵素である蛋白質分解酵素を含んだエステラーゼを抑制する。
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