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特集 細胞毒マニュアル—実験に用いられる細胞毒の知識 神経系に作用するもの シナプス後膜作用薬
ビキュキュリン
著者: 小幡邦彦1
所属機関: 1群馬大学医学部薬理学教室
ページ範囲:P.474 - P.476
文献購入ページに移動ビキュキュリン(図1,左上)はケマンソウ科(ケシ目)の植物の塊茎から得られるphthalide isoquinoline系のアルカロイドで,けいれんを起こすことが知られていた(ウサギのけいれん量0.2mg/kg,静脈内注射)。また咳止めに用いられていたという。これが神経科学で注目され,利用されるようになったのは,1970年,オーストラリアのCurtisら1)が,抑制性シナプスのうちGABAが伝達物質と考えられるシナプスを選択的にブロックすることを発見してからである。
当時,中枢神経系の抑制性伝達物質が盛んに検索され,CABAが有力候補に挙げられた。ストリキニーネは脊髄などの抑制性シナプスをブロックするが,上位中枢のほとんどのシナプスには無効であり,投与したGA-BAの作用も影響されなかった。甲殻類でGABA作動性抑制性シナプスの遮断薬であるピクロトキシンも,溶解度が低いことや容易に発生するけいれんに妨げられて,中枢神経系で明確な結果を得ることが困難であった。そこでCurtisらは広くアルカロイド類を集めて検討し,ビキュキュリンが選択的なGABAのアンタゴニストであり,ストリキニーネで影響されない中枢の抑制性シナプス作用をも抑えることを発見した1,2)。
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