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特集 細胞毒マニュアル—実験に用いられる細胞毒の知識 膜一般に作用するもの
DIDS 4,4-diisothiocyanostilbene-2,2'-disulfonic acid
著者: 濱崎直孝1
所属機関: 1福岡大学医学部第2生化学教室
ページ範囲:P.482 - P.484
文献購入ページに移動DIDSは図1に示す構造を有するスチルベン誘導体で,赤血球膜陰イオン透過系に対する選択的な阻害剤である。
スチルベン誘導体のSITS(4-acetamido-4'-isothiocyanostilbene-2,2'-disulfonic acid;図1)は細胞膜を透過しないアミノ基化学修飾剤としてMaddyによって細胞膜表面の標識に用いられた1)。他のアミノ基化学修飾剤と異なり,SITSは赤血球膜陰イオン透過系の特異的な阻害剤であり,陽イオン透過に対しては何ら影響を与えない。図1に挙げているスチルベン誘導体はすべて同様の性質を示す。この特異的な性質はスチルベン誘導体の構造に由来しており,スチルベン骨格は疎水性を,また二つのスルホン酸基はこれらの誘導体が陰イオンとしての性質を示すのに必須である2)。DIDSの二つのイソチオシアノ基(-NCS)は阻害効果発現には必須ではなく,-NCS基がニトロ基(-NO2)に置換されたDNDS(4,4'-dinitrostilbene-2,2'-disulfonic acid)でも赤血球膜陰イオン透過系は阻害される。スチルベンにはトランス型とシス型の立体異性体が存在するが,トランス型のスチルベン誘導体が陰イオン透過系に対して阻害効果を示す3)。
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