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文献詳細

雑誌文献

生体の科学35巻6号

1984年12月発行

文献概要

特集 細胞毒マニュアル—実験に用いられる細胞毒の知識 膜一般に作用するもの

バリノマイシン(イオノフォア)

著者: 平田肇1

所属機関: 1自治医科大学第1生化学教室

ページ範囲:P.497 - P.499

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 ■特性
 Streptomyces fulvissimusによって産生される分子量1,111のペプチド性抗生物質で,生体膜や人工リン脂質膜に直接作用し,それらの陽イオン透過性を高めるイオノフォアの一種である。Kなどの1価陽イオンと1:1で結合した脂溶性の錯体(包接化合物)を形成し,本来これらの陽イオンに対して不透過性の膜に入りこむことによってイオンの透過を促進する。バリノマイシンは環状構造をもち,分子の外側に多数のメチル基やイソブロピル基が配列するため,分子として疎水性で,水にほとんど不溶で,有機溶媒などに溶ける。また,分子中に解離しうる残基をもたず,分子自身としては電気的に中性であるが,Kなどとの錯体は,全体として陽イオンとしての性質を帯びる。従って,生体膜や人工リン脂質膜にバリノマイシンを与えることにより,膜内外のKなどの電気化学的ポテンシャル差に従ってKなどを移動させる。
 また,バリノマイシンの特徴は,極めて高いKあるいはRbの選択性であり,Naに対し17,000倍以上の選択性を示す。これは陽イオンを包みこむ分子中の空洞が直径2.7〜2.9Åであって,イオン径(γ)1.33ÅのKや1.45ÅのRbとは安定な錯体を作りうるが,少し大きなCs(γ=1.69Å)や,小さなNa(γ=0.95Å)やLi(γ=0.60Å)とは安定な錯体を作りえないことに起因する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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