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特集 細胞毒マニュアル—実験に用いられる細胞毒の知識 細胞骨格に作用するもの
重水
著者: 佐藤英美1
所属機関: 1名古屋大学理学部臨海実験所
ページ範囲:P.526 - P.529
文献購入ページに移動 重水とはD2Oのほかに酸素の重い同位体18O,17Oを多量に含む水をいい,D2O,HDO,H217O,H218O,HD17O,HD18O,D217O,D218Oの総称である。通常の水にはH216O(99.76%),H218O(0.17%),H217O(0.037%),HD16O(0.032%)などが含まれる。18Oと17Oを含む重水はD2Oのように電解法では濃縮されないから,主に分別蒸留法によって濃縮される。しかし,17O,18Oを含む重水の生理学的・生化学的効果については十分な検討はなされていない。一般にはD2Oを重水と呼ぶことが多い。D2Oは自然状態では0.0139〜0.00151mol%の割合で存在するが,UreyらはD2OがH2Oよりも比較的電解し難い点に着目し,数か月がかりで装置を連続作動させ,水素の同位体で質量数2の重水素(Deuterium)の分離に成功した。1932年のことであった。しかし,重水の分離・濃縮の難しさは高価格と夾雑物という問題を生んで,重水の生物学的検討という試みを阻んだ。重水のアイソトープ効果が検討されるようになったのは,新製法による高純度・低価格の重水の供給が可能となった1950年代以降のことである。
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