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文献詳細

雑誌文献

生体の科学35巻6号

1984年12月発行

文献概要

特集 細胞毒マニュアル—実験に用いられる細胞毒の知識 代謝系に作用するもの

バナデイト

著者: 誉田晴夫1 松井英男1

所属機関: 1杏林大学医学部生化学教室

ページ範囲:P.594 - P.595

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 ■特性
 バナジウムは,酸化数が+2から+5までのものが一般的に知られている。このうち,+5の酸化状態であるパナジン酸イオン,VO3-またはVO43-を含む塩をバナデイト(バナジン酸塩)と総称し,この中でVO3-を含む塩をメタバナデイト,VO43-を含む塩をオルトバナデイトと呼ぶ。バナジン酸イオンはグルタチオンやアスコルビン酸などの還元剤によって,+4の酸化状態であるバナジルイオン(VO2+)に変わる。バナジルイオンは空気中の酸素によって容易にバナジン酸イオンに酸化されてしまう。しかし,生体内,たとえば赤血球中では,大部分のバナデイトはグルタチオンによって還元され,バナジルイオンとしてヘモグロビンと結合し,安定化されている。
 バナデイトは,Na,K-ATPaseのようにリン酸化中間体を形成する酵素の活性を強く阻害する1)。一方,バナジル塩はリボヌクレアーゼを阻害するという報告もあるが,Na,K-ATPaseに対する阻害作用は弱く,生体内では蛋白質などと結合しているので,阻害作用はないと考えられている。いずれにしろ,不安定で取り扱いにくい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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