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文献詳細

雑誌文献

生体の科学36巻1号

1985年02月発行

文献概要

特集 Transmembrane Control

インスリン受容体

著者: 春日雅人1

所属機関: 1東京大学医学部第三内科

ページ範囲:P.11 - P.15

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 インスリン分子は,標的細胞の細胞膜上に存在する受容体という蛋白とまず特異的に結合する。インスリン受容体に結合したインスリン分子は,次にエンドサイトーシスにより細胞内へ取り込まれ,さらにライソゾームに運ばれそこで蛋白分解酵素によって分解され,結局は細胞外へ吐き出される。以上の過程のうち,いずれの段階でいかにしてインスリン分子の持っている情報が細胞内へ伝達されていくかは非常に興味のある問題であるが,明確な解答は得られていない。われわれは,インスリン受容体がトランスメンブレン蛋白であること,さらにインスリン分子がインスリン受容体に結合すると受容体の燐酸化が亢進し,受容体の細胞質側に内在されていると考えられるプロテインカイネース活性も亢進することを見出した。この結果から考えられるもっとも単純な図式は,インスリン受容体蛋白の細胞膜外側にインスリン結合ドメインがあり,ここに結合したインスリン分子の情報は,受容体自身によりトランスメンブレンシグナリングされ,細胞膜内側の部分の燐酸化を亢進しカイネース活性を亢進する。そしてこのカイネース活性がさらに細胞内ヘインスリン分子の情報を伝達するというものである。本稿では,このような「インスリン受容体—カイネース仮説」の立場にたって,この仮説の妥当性,問題点について論じてみたい。エンドサイトーシス以下の課程については次章で詳しく述べられる予定であるので参照されたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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