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文献詳細

雑誌文献

生体の科学36巻1号

1985年02月発行

文献概要

特集 Transmembrane Control

受精におけるTransmembrane Control

著者: 星元紀1

所属機関: 1東京工業大学理学部生物学教室

ページ範囲:P.38 - P.44

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 有性生殖は複相細胞の出現と深く結びついた現象で,「細胞の融合を介して遺伝情報の組換えを行い,新しい遺伝質を持った個体を発生させる仕組み」と定義されるが1),その本質は,核(細胞)を若返らせると同時に遺伝的多様性を増すことにあると解釈されている。このような巧妙な機構を作り出すことによって,生物は急速に新しい遺伝子を蓄積し,爆発的に多様化・大型化したものと考えられる。
 後生動物では,有性生殖に直接与る生殖細胞と,その他の細胞すなわち体細胞とがはっきりと区別されるが,生命は生殖細胞の系列を通じ,個体の死を超えて連綿と続いている訳である。この系列は複相から単相へ(減数分裂),単相から複相へ(受精)という環の連なりともいえる。もちろん核の融合は単相の核すなわち雌性前核と雄性前核の間でのみ起こることではあるが,卵と精子との間の細胞融合(以下「受精」をこの意味に限定して用いる)は,後で述べるように必ずしも単相の細胞間で起こることではない。精子は1個の精母細胞が減数分裂を経て4個の精細胞となった後に,さらに分化してできたもので精母細胞はもとより精細胞にも受精能はない。一方卵は,1個の卵母細胞が,第1,第2減数分裂で極端に不等な分裂を行い,それぞれの姉妹細胞を極体として放出し,最終的には1個の卵細胞となる。しかし一般には,第1減数分裂前期,すなわち卵核胞と呼ばれる大きな核を持った第1次卵母細胞の状態で,卵巣内で休止している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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