特集 肝細胞と胆汁酸分泌
肝における胆汁酸抱合機転—硫酸抱合・グルクロン酸抱合
著者:
村田宣夫1
別府倫兄2
出月康夫2
所属機関:
1東京大学医学部第二外科 現在,都立府中病院外科
2東京大学医学部第二外科
ページ範囲:P.132 - P.138
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胆汁酸は生体内でほとんど抱合胆汁酸として存在する。カルボキシル基がアミノ酸とアミド結合した胆汁酸(グリシン抱合およびタウリン抱合胆汁酸)は古くから知られ,胆汁中の抱合胆汁酸の大部分がこのアミノ酸抱合胆汁酸である。化学的には胆汁酸がアミノ酸抱合を受けることにより極性が増し,pKa値が低下し,そして酸性溶液での溶解度が増加する1)。この抱合は肝でのみ行われる。肝のマイクロゾームで胆汁酸は活性化coenzyme A誘導体となり,ついでライソゾームでグリシン(あるいはタウリン)と抱合する2段階反応である2,3)。胆汁中に排泄されるグリシン抱合胆汁酸とタウリン抱合胆汁酸の比率はおよそ3:1であるが,この比率は肝胆道疾患その他で変化する4)。こうして小腸に排泄された抱合胆汁酸は一部腸内細菌の働きにより脱抱合を受ける。これら胆汁酸の大部分は再吸収され肝に戻り,いわゆる腸肝循環を営み,抱合・脱抱合を繰り返している。
一方,水酸基にエステル結合する硫酸抱合,あるいはグリコシド結合するグルクロン酸抱合胆汁酸は比較的最近明らかにされたものである。前者は1967年Palmerにより5),後者は1974年Back6)により発見され,その後現在に至るまで精力的にこれら新しい抱合胆汁酸の性質,代謝などの研究が進められている。