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特集 血管内皮細胞と微小循環
血管内皮細胞のプロスタグランディン代謝
著者: 室田誠逸1
所属機関: 1東京医科歯科大学歯学部顎口腔機能研究部門
ページ範囲:P.198 - P.201
文献購入ページに移動 血管内皮細胞は,血管内腔をおおうただ一層の細胞であるが,血液成分,とくに血小板と血管壁との直接的な接触を防げるという重要な役割を果たしている。血小板がひとたび凝集すると,図1に示すように,実にさまざまな物質が放出され,その近傍でさまざまな化学反応,生物反応が誘起される。また血小板の膜からは,アラキドン酸が遊離され,これを原料としてトロンボキサン(TX)A2,12-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(12-HETE),platelet activating factor(PAF)などがつくられ,血小板外へ放出される。TXA2とPAFは,新たな血小板の凝集を促し,12-HETEには,血管中膜平滑筋細胞の遊走能を亢進し,内膜肥厚をもたらす可能性が示唆されている1)。α顆粒から放出されるplatelet derivedgrowth factor(PDGF)にも中膜平滑筋細胞の遊走能亢進作用があり,さらにこのPDGFには,中膜平滑筋細胞の増殖促進作用もあり,やはり動脈硬化時に見られる内膜肥厚との関係が重要視されている。このように,血小板がひとたび凝集を開始すると,その周辺の恒常性が破れることになるので,生体は血小板の血管内での凝集を阻止する機構を備えていなければならない。この血小板凝集阻止にもっとも重要な役割を果たしている細胞が,血管内皮細胞なのである。
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