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特集 神経科学実験マニュアル 脳組織の実験材料
哺乳類の摘出脊髄標本
著者: 大塚正徳1
所属機関: 1東京医科歯科大学医学部薬理学教室
ページ範囲:P.325 - P.327
文献購入ページに移動 1973年頃からわれわれの教室では新生ラットの摘出脊髄標本を用いて実験を行っている。この標本は脊髄ニューロンに対する興奮作用のbioassayを目的に開発されたものである。当時われわれは脊髄神経後根の抽出物を分画し,各分画を脊髄ニューロンに対する興奮作用についてスクリーニングしていた。Bioassay系としては最初カエルの摘出脊髄標本を用いた。これは適用する物質の濃度を正確にコントロールし,力価を正確に測定し得るからである。しかしわれわれが目標としていたのは哺乳類の後根中に存在するsubstance Pであったので,bioassay系としてはカエルではなくて哺乳類の脊髄が望ましかったことはいうまでもない。一般に哺乳類の脊髄がカエルの脊髄のようにin vitroで生きることができないのは主として酸素の供給が十分に行われないためと思われる。そこで灌流液から拡散によって酸素が供給されるように,できるだけ小さな脊髄を用いればよいと考え,最初は生れたばかりのマウスの脊髄を用いたが,これはあまりにも小さくてdissectionが困難であった。そこで次に新生ラットの摘出脊髄を試みた。Dissectionは後にも述べるように比較的簡単であった。最初,取り出した脊髄が果して生きているのかどうかを突き止めるのがやや困難であったが,生きているとわかってからは灌流条件や記録条件,dissectionなどを改善することは比較的容易であった1)。
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