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文献詳細

雑誌文献

生体の科学36巻5号

1985年10月発行

特集 細胞分裂をめぐって

分裂時のチュブリン重合の調節

著者: 佐藤英美1

所属機関: 1名古屋大学理学部付属臨海実験

ページ範囲:P.445 - P.450

文献概要

 I.何故ウニの卵を?
 19世紀半ばにBoveriやHertwigが細胞分裂の研究に用いて以来,ウニの受精卵はバッタの精母細胞やムラサキツユクサの花粉母細胞と並んで,分裂研究の重要な素材とされてきた。その流れは今も変らない。海産無脊椎動物,とくにウニ卵を材料とした細胞分裂の細胞生物学・生化学的研究が,毎年数多く報告されているのである。この章では棘皮動物卵でえられた情報に重点を置いて述べるが,まずウニ卵の実験材料としてのメリットについてふれておきたい。
 代表的な沿岸帯海棲生物の優占種であるウニの成熟周期は,温度によって第一義的に,ついで潮汐により細かく調節されている。したがってウニの適当な種を選べば,特定の季節に大量の均質な成熟卵が採取できる。ウニの生活環境は亜潮間帯で,塩分濃度,比重,pHなどが安定した海水中に棲む。そして初期発生に必要な生活物質のほとんどすべてが卵内に貯えられているから,培養条件などの配慮はいらない。媒精は容易であって,卵は予め組込まれているプログラムに従い,高次の同調発生を示す。発生の過程は早く,かつ再現性に富む。たとえば大型(直径100μm)で透明なコシダカウニMesqiliaglobulusの受精卵は,水温25℃では第四分裂を完了するまで2時間しかかからない。この間に15個の核分裂装置がタイミングよく構築・脱構築され,8個の中割球が動物極に,4個ずつの大・小割球が植物極に形成される。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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