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文献詳細

雑誌文献

生体の科学36巻5号

1985年10月発行

特集 細胞分裂をめぐって

微小管形成中心としての中心体

著者: 鳥山優1

所属機関: 1東京大学理学部生物化学教室

ページ範囲:P.455 - P.460

文献概要

 動物細胞の分裂装置は二つの中心体より伸長した微小管から形成される。一般に中心子は分裂前期までに複製され,核のまわりに対称的な配置をとる。分裂期の中心子はそのまわりに中心子外周物質を有し,両者を合わせた構造を中心体と呼ぶ。微小管は分裂前期に中心体から放射状に伸長し,核膜の崩壊とともに核質内に進入後紡錘体を形成する。すなわち,核分裂の過程において,中心体は分裂装置形成の時期および位置の決定に支配的な役割を果たしているといえよう。したがって,核分裂の機構を解明するにあたって,中心体の細胞生理学的,生化学的研究が不可欠である。
 いろいろな動物細胞,主に培養細胞や発生中の卵細胞の電子顕微鏡観察より,分裂装置および中心体の構造が明らかになってきている。中心子はトリプレット微小管が管状に配置したもので,中心体内では通常二つが直交して存在する。中心子と同じ構造の基底小体に微小管の構成因子であるチュブリンを加えると,トリプレット微小管のA小管の末端から新たに微小管の形成が起こるのが観察される1)。しかし中心子が中心体中にあると,細胞内でもあるいは試験管内でも,微小管は中心子から伸びずに中心子外周物質から伸長する2)。すなわち,中心体による微小管形成の問題において,中心子の調節的役割は否定できないにしても3),直接MTOC(Microtubulc Organizing Center4))として働いているのは中心子外周物質である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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