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文献詳細

雑誌文献

生体の科学36巻5号

1985年10月発行

文献概要

特集 細胞分裂をめぐって

小腸上皮細胞の分裂と中心子の位置変化

著者: 神宮司洋一1

所属機関: 1群馬大学医学部第2解剖学教室

ページ範囲:P.467 - P.470

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 小腸の吸収上皮細胞では,細胞骨格要素の一つの微小管は細胞の長軸にほぼ平行に分布・配列している。細胞の長軸方向に走る微小管は,上皮細胞の円柱形の形態や生理機能の維持に役立つものと思われ,小腸以外の上皮でもみられる1)。小腸の上皮細胞では,一般に微小管の形成中心と考えられている中心子は,核やゴルジ装置から離れた管腔側表層に位置する2)。そして,中心子と微小管の配列とは互いに関連が弱いように思える3)。著者らはマウス小腸上皮を材料に,細胞極性と微小管および中心子の分布・配列との関連性を検討しており,これまでに,細胞分裂の過程で中心子が特異な位置の変化を示すことを見出している。
 よく知られているように,小腸上皮の分裂は腸陰窩部でのみ行われ,分裂後の細胞は腸絨毛部の頂点に向って移動する4)。この分裂期を通じて,細胞の管腔側表層の形態は維持されている。とくに細胞間の接着構造の保存は,管腔内と組織内部との間の選択的な物質の透過という重要な生理機能を維持するのに役立っている。こうして細胞の一部が表層に固定されているために,細胞分裂は管腔に面したままで行われ,細胞はこの間に,エレベーター運動をする5,6)。このようなin vivoの上皮細胞に特有な分裂様式を背景として中心子の位置の変化について述べたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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