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文献詳細

雑誌文献

生体の科学36巻5号

1985年10月発行

文献概要

特集 細胞分裂をめぐって

細胞質分裂におけるカルシウム変動

著者: 吉本康明1 岩松鷹司2 平本幸男34

所属機関: 1基礎生物学研究所細胞増殖部門 2愛知教育大学教育学部生物学教室 3東京工業大学理学部生物学教室 4基礎生物学研究所細胞増殖部門

ページ範囲:P.499 - P.503

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 卵の成熟,受精,卵割において細胞内Ca2+は重要な役割を担っていると考えられている。とくに受精の際のCa2+の変動はメダカやウニ,ヒトデなどの卵で比較的よく研究されている。これらの卵においては受精の際,Ca2+濃度の一過性の増加現象が観察されるが,これは卵の発生開始の引金の一つと考えられている。しかし,この後卵割に至るまでのCa2+の挙動はよくわかっていない。とくに卵割の際のCa2+の挙動は興味深いものであるが,一般に卵割や細胞分裂におけるCa2+濃度の変化を研究した例は少ない。
 BakerとWarner1)はアフリカツメガエルの卵で,第一,第二卵割の際にわずかなCa2+レベルの増加を観察しているが,一方でRinkら2)は同じ材料で目立ったCa2+変化はないと報告している。メダカ卵においてはRidgwayら3)が第一,第二卵割における微小なCa2+パルスを観察している。また,ごく最近Poenieら4)はウニ卵において,前核の移動期,核膜の消失する時期,分裂前期から後期への転換期,第一卵割時にそれぞれCa2+濃度の上昇が見られると報告している。植物ではWolniakら5)がマユハケオモトの胚乳細胞を用いて,膜系に結合したCa量が分裂後期の直前に減少することを観察し,この時期に分裂装置内のCa2+濃度が上昇すると推定した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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