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文献詳細

雑誌文献

生体の科学36巻5号

1985年10月発行

文献概要

実験講座

プロパンによる急速凍結置換固定法とその応用

著者: 井上金治1 黒住一昌1

所属機関: 1群馬大学内分泌研究所形態部

ページ範囲:P.518 - P.522

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 急速凍結置換固定法は,まず,生の組織を急速に冷却し,ガラス状の氷(vitrified ice)になるように凍結する。次に,凍結した組織を十分に冷却した固定剤を含むアセトンの中に保存して氷をアセトンに置き換え,組織を凍結させたままで,組織の脱水と固定を同時に進行させようとする方法である。この方法は,従来一般的に使用されているグルタールアルデヒドやオスミウムを水溶液にして固定する化学的固定法とは異なり,生きた試料を急速に凍結させるところに特徴があり,化学的固定法に対して物理的固定法とも呼ばれる。
 電子顕微鏡によって細胞を観察しようとする場合,常に問題になるのは固定法である。従来使用されている化学的固定法は,使用の歴史も長く,その使用法にも種々の工夫がなされているために,固定後に得られる細胞の微細構造は,細胞の真の姿をかなりよく保存しているに違いない。しかし,化学的固定法は固定が比較的緩徐に進行するために,細胞に起こる急速な形態的変化を伴う生物現象を捉えるのは難しい。一方,急速凍結置換固定法では,まず生の組織を急速に凍結して氷の状態で次の固定を進行させるために,細胞の微細構造は真の姿に近く固定されるであろうし,細胞内に起こる急速な形態的変化を捉えるのにも好都合な方法である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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