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特集 脂肪組織
脂肪組織の中枢支配—肥満と食欲
著者: 大村裕1 吉松博信1
所属機関: 1九州大学医学部生理学教室
ページ範囲:P.555 - P.564
文献購入ページに移動 生体のエネルギーバランスの恒常性は摂食という形での外部からのエネルギー源の摂取および生体内でのエネルギー産生・消費系によって維持されている。前者については,摂食行動の調節機構という観点から行動学的,心理学的研究が行われ,最近では神経生理学的アプローチによって,その中枢神経機構が解明されつつある。そこでは肥満は過食の結果と考えられ,行動異常につながる脳の機能的障害について解析されている。一方,肥満や摂食異常を末梢の代謝異常やホルモン分泌異常などの体液性要因によって解明しようとする試みも行われてきた。すなわち,脂肪組織での脂肪代謝,肝臓や筋肉における糖代謝,下垂体ホルモン,甲状腺ホルモン,副腎皮質ホルモン,副腎カテコラミンおよび膵のインスリンやグルカゴンなどの役割が肥満発症との関係から研究されている。とくに褐色脂肪組織(brown adipose tissue,BAT)は熱産生機能を有しており,寒冷時の体温維持機能に関与しているが,種々の肥満動物でその機能異常が認められ,過食や肥満を防止するエネルギーバランス調節系としての役割が注目されている。
以上の生体エネルギーバランスを維持する二つの要因,すなわち摂食を調節する中枢神経機構と,脂肪代謝などの末梢の代謝・内分泌機構はそれぞれ独立して働いているわけではなく,互いに緊密な情報交換のもとに機能している。
以上の生体エネルギーバランスを維持する二つの要因,すなわち摂食を調節する中枢神経機構と,脂肪代謝などの末梢の代謝・内分泌機構はそれぞれ独立して働いているわけではなく,互いに緊密な情報交換のもとに機能している。
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