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文献詳細

雑誌文献

生体の科学36巻6号

1985年12月発行

文献概要

特集 脂肪組織

血中リポプロテインのホメオスタシス

著者: 藤井節郎1 山田晴雄1

所属機関: 1(財)大阪基礎医学研究奨励会

ページ範囲:P.572 - P.579

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 一般に脂肪組織は,過剰となったエネルギーを中性脂肪の形として貯蔵する静的な組織と考えられがちであったが,近年の活発な研究により脂肪組織は血中リポプロテインの恒常化に大きく関与するとともに,ホルモンや神経によって代謝調節される動的な組織であることが明らかにされつつある。さらに脂肪組織は中性脂肪の代謝のみならず,虚血性心疾患(CHD)発症の危険因子であるコレステロールの代謝にも関与している1)
 肥満は標準体重以上に体脂肪が蓄積した状態であって,生活環境などによる外的要因と遺伝や内分泌疾患などによる内的要因によって発現するものであるが,いずれにせよ摂取エネルギーが消費エネルギーを上回った結果である。肥満によって体に物理的負担がかかるばかりでなく代謝異常も起こしやすく,糖尿病や高血圧症,心筋障害,高脂血症,脂肪肝などの諸疾患を発症させる原因となる。これらの疾患は最終的に動脈硬化症を引き起こす成因である。統計学的調査による標準死亡率において肥満度が1%増加すると死亡率は同じく1%増加することが明らかにされている。さらに,昨年米国で報告されたLRC-CPPT(The Lipid Research Clinics CoronaryPrimary Prevention Trial)2)の7年間の疫学調査より,血中のリポ蛋白,とくにLDL-コレステロールを1%低下させるとCHDの発症は2%減少することが報告された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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