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文献詳細

雑誌文献

生体の科学36巻6号

1985年12月発行

文献概要

特集 脂肪組織

脂肪細胞のホルモン受容体—インスリン受容体を中心に

著者: 門脇孝1 春日雅人1 赤沼安夫1

所属機関: 1東京大学医学部第三内科

ページ範囲:P.580 - P.593

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 古くより脂肪細胞はエネルギーの貯蔵庫とみなされ,食物から供給される糖質を中性脂肪という水分を含まない高密度の形でエネルギーとして貯えている。とくに飢餓時には,脂肪分解によって遊離した脂肪酸は,ブドウ糖に代って生体にエネルギーを供給する。脂肪細胞の代謝はホルモンによって巧妙に調節されていることが知られている。とくに,ラット脂肪組織はインスリンに対する感受性が高く,また脂肪動員ホルモンであるカテコラミン,グルカゴン,ACTHなどにも鋭敏に反応する。脂肪細胞のホルモンによる調節に関する研究がこの十数年飛躍的に進歩したのは,Rodbellによる遊離脂肪細胞系の開発によるところが大きい1)。その後,モデルシステムとして3T3 L1脂肪細胞2,3)や,最近ではラット脂肪細胞初代培養4)なども用いられるようになり,脂肪細胞の系は現在でも各種ホルモン受容体とホルモン作用の研究,また糖代謝,脂質代謝の研究に広く応用されている。これは,糖尿病,肥満などヒトの代謝異常の解明にもつながるものと考えられる。
 本小論では,はじめに脂肪細胞の代謝特性とホルモンによる調節を概観した後,脂肪細胞のホルモン受容体の中でももっとも研究の進歩の著しい,インスリン受容体とカテコラミン受容体の構造と機能について解説し,最後にホルモン受容体以降の情報伝達系についてインスリンの作用機序を中心に述べてみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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