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文献詳細

雑誌文献

生体の科学36巻6号

1985年12月発行

文献概要

話題

遺伝子を"突然変異"させる新しい方法—antisense RNAは卵細胞内でグロビンのmRNAと特異的に結合して完全にその翻訳を遮断する

著者: 高橋豊三1 樋川直司1 奥田研爾1

所属機関: 1横浜市立大学医学部細菌学教室

ページ範囲:P.634 - P.635

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 ある特別な遺伝子の活性を研究する場合,微生物遺伝学では従来,主として野生株と突然変異株との比較から,その変異の原因となっているDNA上の構造の違いを導き出してきた。しかし,カエルやマウスやヒトのような,微生物に比べてはるかにゲノムサイズが大きな高等生物では,この手法をそのまま適用することは,はなはだ難しい。一般的な遺伝子操作技術を駆使しても,これらの細胞では細菌の遺伝子機能を解析するほどうまくはいかない。しかし最近,二,三の研究者によって,これらの欠陥を解消しうる方法が開発され始めている。近い将来,高等生物の細胞でも遺伝子の発現を特異的に抑えることが可能になるであろう。要するに,遺伝子突然変異を思いのままに起こさせることができると思われる。最近,Cetus-UCLAシンポジゥムで互いに関連性のある,二つの異なった手法が報告された。それらは遺伝子発現に主要な第二番目のステップである"翻訳"を阻害して,遺伝子発現を阻止しようというものである。遺伝子発現の最初のステップは遺伝子をmRNAにコピーすることであり,第二段階として核酸のメッセージが翻訳されてタンパク質が作られる。この時,問題のタンパク質遺伝子のmRNAに対して構造的に相補的なRNAを細胞の中に導入すると,その翻訳を妨げることができる。つまり,相補的なRNA(これをantisense RNAとよぶ)がmRNAに結合して翻訳されるのを妨げるのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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