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文献詳細

雑誌文献

生体の科学37巻1号

1986年02月発行

文献概要

特集 脳のモデル

神経回路網理論の行方

著者: 甘利俊一1

所属機関: 1東京大学工学部計数工学科

ページ範囲:P.13 - P.20

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 I.神経回路網理論とは何か
 神経細胞は多入力1出力の情報処理素子である。しかも,入出力信号はパルスであるから,これを0と1の2値で表わすことができる。入力信号の荷重和がある一定値を越えるかどうかで出力信号の値が決まるから,その動作はいわゆるしきい素子と考えてよい。McCullochとPittsはこのように考えて,形式ニューロンという神経細胞のモデルを提案し,これが論理系として完全であること,わかりやすくいえばどんなコンピュータも形式ニューロンを用いて構成できることを示した1)。こうして,脳が論理系として完全であることが示されたのである。この仕事は,神経回路網モデルの始まりとなったのみならず,オートマトンや言語など,その後のコンピュータサイエンスの発展に大きな影響を及ぼした。もちろん,現在の観点ではニューロンは,離散的な情報を処理する論理素子というよりは,アナログ情報を処理するアナログ素子と考えた方が自然である。しかし,多数の入力信号の荷重和を取ってこれらを総合し,その非線形関数として出力を出すというニューロンの特性に変わりはなく,今でも形式ニューロンを用いて神経回路網の動作を解析してよい場合も少なくない。
 神経回路網理論はMcCullochとPittsのこの仕事に始まるといってよい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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