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文献詳細

雑誌文献

生体の科学37巻1号

1986年02月発行

文献概要

特集 脳のモデル

行動する機械

著者: 中野馨1

所属機関: 1東京大学工学部総合試験所

ページ範囲:P.41 - P.48

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 最近,脳の研究は多角的に行われている。生理学的知見をできるだけ取り入れて脳をモデル化することによって,脳の機能の本質に迫ろうとする構成的研究もその一つである。その際,脳全体のモデル化は不可能なので,脳の機能を細分化して,その一つ一つを実現するモデルを構成してゆくのであるが,段々進めてゆくと,全体の絡みが重要であることがわかってくる。つまり,脳において,受容,認識,概念形成,記憶,思考,行動などは一体となって全体の機能を発現させており,別々には論じられない面がある。しかも,その面の解明こそ概して重要度が高い。そして,それを行うためには,脳をシステムとしてモデル化してみる必要がある。
 構成的研究というのは,自動制御における「システム同定」のように,脳をブラックボックスとみなして,入出力関係が等しくなるようにモデルを構成し,それができたときブラックボックスの内容がモデルと同じ,または少なくとも類似していることを期待するのである。もちろんモデル化に際して生理学的にわかっていることを使うので,入出力関係だけからではないが,主に入出力関係から同定することになる。類似している可能性は,情報論的な必然性に導かれて,つまり等しい結果に到達する情報処理機構がそういくつもあるわけはないという意味で,思ったよりは高いはずである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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