文献詳細
文献概要
話題
イノシトール3リン酸をめぐって
著者: 平田雅人1
所属機関: 1九州大学歯学部生化学
ページ範囲:P.75 - P.78
文献購入ページに移動 Ca2+を細胞内情報伝達の媒介とするホルモンや神経伝達物質などの刺激に共通して見られる現象は,受容体活性化に伴い微量のリン脂質であるイノシトールリン脂質の代謝亢進(PIレスポンス)が生じることである1,2)。PIレスポンスがどのように細胞内遊雑Ca2+濃度上昇と関連しているかに関して,①PIレスポンスにより細胞膜のCa2+チャネルが開く,②PIレスポンスの結果,ジアシルグリセロールから生じるホスファチジン酸がCa2+イオノフォアとして作用するなどの仮説が提出されていた。最近この他に第三の機構として,細胞内Ca2+貯蔵部位からCa2+遊離がひき起こされることも報告されてきた。このCa2+遊離作用を有するのがイノシトール3リン酸(InsP3)である。
細胞内Ca2+貯蔵部位からのCa2+遊離に関する研究は,これまで主に骨格筋小胞体を用いて行われ生理的に起こり得る機構としてCa2+によるCa2+遊離と"脱分極"によるCa2+遊離の二つが知られていた3)。しかし筋肉以外の組織では,細胞外からのCa2+流入にのみ重点がおかれ,上記二つの機構に関する研究はほとんどなく,Ca2+遊離については言及されていない現状であった。この意味においても生理的に生成され得るInsP3がCa2+遊離作用を有することは重要な現象であろう(もちろん,InsP3が真に生理的なCa2+遊離の媒介となり得るかどうかは問題であるが)。
細胞内Ca2+貯蔵部位からのCa2+遊離に関する研究は,これまで主に骨格筋小胞体を用いて行われ生理的に起こり得る機構としてCa2+によるCa2+遊離と"脱分極"によるCa2+遊離の二つが知られていた3)。しかし筋肉以外の組織では,細胞外からのCa2+流入にのみ重点がおかれ,上記二つの機構に関する研究はほとんどなく,Ca2+遊離については言及されていない現状であった。この意味においても生理的に生成され得るInsP3がCa2+遊離作用を有することは重要な現象であろう(もちろん,InsP3が真に生理的なCa2+遊離の媒介となり得るかどうかは問題であるが)。
掲載誌情報