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文献詳細

雑誌文献

生体の科学37巻2号

1986年04月発行

特集 血小板凝集

血小板によるセロトニンの取り込み,運搬,放出

著者: 渡辺泰子1 小林凡郎1

所属機関: 1北里大学薬学部生理化学

ページ範囲:P.115 - P.121

文献概要

 血小板セロトニン(SER)は,1層の単位膜に囲まれた小胞(SER顆粒)の中に貯蔵されている。オスミン酸固定により,この小胞は電顕的に電子密度のきわめて高い顆粒として観察されるので濃染顆粒(dense body)とも呼ばれる。血小板SER含量は種によって著しく異なり,ウサギ(38.5nmol/mg protein)ではヒト(2.2)の20倍も高い1)。濃染顆粒の中には,SER,ヒスタミン,カテコラミンなどの他,大量のアデニンヌクレオチド(主としてATP)と相当量のCa,Mgが含まれている。顆粒内の蛋白濃度はきわめて低く,SERが蛋白との複合体として存在しているとは考えられていない。また,ウロン酸やヘキソサミンは検出されず,神経細胞内顆粒で見られるようなグルコサミノグリカン鎖との結合体もないものと考えられる1)
 濃染顆粒は流血中の血小板にのみ認められ,血小板の母細胞である骨髄の巨核細胞には認められないが,多量のSERを繰り返し投与すると巨核細胞中にも濃染顆粒が出現し,SERも検出されるようになる。このことは巨核細胞の中にもSERの取り込み能を持つ顆粒のあることを示している。巨核細胞にはウラン親和性でヌクレオチドや金属を含む顆粒が存在するが,血小板貯蔵顆粒欠乏症のヒトや動物ではこの顆粒が非常に少ない2)。このウラン親和性顆粒がSER顆粒の前駆顆粒であろうと考えられている1,2)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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