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雑誌目次

雑誌文献

生体の科学37巻3号

1986年06月発行

雑誌目次

特集 脳の化学的トポグラフィー

〈略号一覧〉

ページ範囲:P.161 - P.162

3 principal oculomotor nucleus
3V third ventricle
6 abducens nucleus
7 facial nucleus
7n facial nerve or root of facial nerve
8n vestibulocochlear nerve
10 dorsal motor nucleus of vagus
12 hypoglossal nucleus

モノアミン

著者: 永津郁子

ページ範囲:P.163 - P.167

 モノアミンには生体アミンのうちカテコール核をもつカテコラミン(CA),すなわちドーパミン(DA),ノルアドレナリン(NA),アドレナリン(AD)と,インドール核をもつセロトニン(5-HT)とがある。CAの構造式と生合成に関与する酵素を図1に示す。なおCAの分解経路1)や5-HTの形態学2)については文献を参照されたい。
 ADは1901年Takamine,Aldrichらによって副腎髄質から結晶化された。ADがtyrosine→DOPA→DA→NA→ADの経路で生合成されることは1939年Blaschkoにより提唱され,1950年にUdenfriend一派によりアイソトープ標識トレーサー実験で立証された。1946年U. S. von Eulerにより交感神経節後ニューロンの伝達物質がNAであることが確認された。DAはHoltzらにより1942年に尿や組織に発見された。NAはVogt(1954)が,DAはMontagu(1957)が化学的に検出した。1959年I. SanoらとCarlssonはヒト剖検脳と動物の脳内CA分布を調べ,DAが錐体外路の新線条体にとくに多いことを認めた。J. Parkinsonにより1817年に報告された筋拘縮,振戦を伴うParkinson(P)病が新線条体のDAの高度減少によることも明らかになった。

ヒスタミン

著者: 和田博 ,   渡邊建彦

ページ範囲:P.168 - P.171

 生体にある芳香族アミンのうちカテコラミンとセロトニンは,脳の神経伝達物質ないしは修飾物質として認められてきたが,ヒスタミンは示唆されてはいたものの確証がなかった。われわれはヒスタミン産生酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)をマーカーとした組織螢光抗体法により,ラット脳におけるヒスタミン・ニューロン系の大要を初めて明らかにした1)。この小文ではラット脳におけるヒスタミン・ニューロン系の局在と,それから示唆される意義について簡単に述べたい。

セロトニン

著者: 佐野豊

ページ範囲:P.172 - P.175

 セロトニン(serotonin,5-hydroxytryptamine,5-HT)は強い血管収縮機能をもつ物質として血液から抽出,単離されたインドール基をもつアミンであって,生体内では2種類の酵素,すなわち水酸化酵素と脱炭酸酵素の働きを受けて,トリプトファンから5-ヒドロキシトリプトファンを経て生合成される。このアミンはTwarog & Page(1953)1)によって,中枢神経組織の中に広く分布していることがはじめて生化学的に証明され,またその化学構造が幻覚誘発剤,たとえばLSDに類似することから,当初精神疾患との関連において注目された。

GABA

著者: 木村宏

ページ範囲:P.176 - P.179

 γ-アミノ酪酸(GABA)が哺乳類の神経系に存在することは,1950年にはじめて報告された1,2)。このアミノ酸およびその合成酵素L-グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)が,主として中枢神経系に存在し,他の臓器に認められないという事実3)が明らかになるにおよんで,次第に神経化学者の興味をひき,GABA代謝経路の解析に力が注がれた。現今のところGABA産生の主経路は,GADを介するグルタミン酸の脱炭酸反応によるものと考えられ4),この点GABAはアミンの一種とも言える。GABAの分解は,GABA-アミノ基転移酵素(GABA-T)によるコハク酸セミアルデヒド(SSA)への転化であるが,多くのアミノ基転移反応と同様にα-ケトグルタル酸からグルタミン酸への転化と共役して起こる。生じたSSAは,神経組織に豊富に存在するコハク酸セミアルデヒド脱水素酵素5)によりTCA回路の一要素であるコハク酸になり,最終的にH2OとCO2に分解されることになる(図1)。したがって,アミノ酸プールの役割を担うグルタミン酸と,糖代謝の主たるTCA回路との間を橋渡しする「GABA shunt」と呼ばれる経路が成立し,脳内物質代謝にも関与している。

アセチルコリン

著者: 市川友行 ,   平田幸男

ページ範囲:P.180 - P.183

 アセチルコリン(ACh)は最初に同定された神経伝達物質であるが,AChの脳内分布すなわちコリン作動性ニューロン(以下AChニューロン)の分布は,信頼できる解剖学的標識法がないため明確ではなかった。しかし,80年代に入り,ACh合成酵素であるコリン-アセチルトランスフェレース(ChAT)に対する特異性の高い抗体を用いた免疫組織化学が確立され,中枢神経系におけるAChニューロンの解剖学的知識は急速に増えつつある1)。本稿では主として,ChATの免疫組織化学を用いて明らかにされた哺乳類前脳におけるAChニューロンを紹介する。

プロスタグランジンD合成酵素

著者: 裏出良博

ページ範囲:P.184 - P.187

 中枢神経系におけるプロスタグランジン(PG)の含量や合成および分解系については,とくにこの数年,生化学的な研究が進み,かなりの情報が蓄積されてきた。しかし,その局在については断片的な報告がなされているだけで,いまだ全体像の把握にはほど遠い感がある。
 われわれはラットおよびヒトの中枢神経系で合成される主なPGであるPGD2に注目し,その合成系の解析を進めている1)。当稿では現在までに集めたラット脳におけるPGD2合成系の局在に関する免疫組織化学の結果を示し,中枢神経系に新しく登場した既知のアミノ酸やアミン系の神経伝達物質あるいはニューロペプチドと物性的にも大きく異なるこの生理活性物質への関心を深めて頂くと同時に,われわれの研究に対するご理解とご批判を期待したい。

ソマトスタチン

著者: 川野仁 ,   大黒成夫

ページ範囲:P.188 - P.191

 最近15年ほどの間に続々と数多くのペプチド性生物活性物質が生体から単離され,構造が明らかにされている。これらを用いて特異性の高い抗体が得られた場合,ラジオイムノアッセイや免疫組織化学的手法により,抗原の生体内分布や含量が調べられ,機能的役割が論議されることとなった。その結果,ほとんどのペプチドが最初に抽出された組織以外にも生体内に広く分布することが知られ,脳・腸ペプチドのような概念も生まれている。すなわち,脳内にあるペプチドが腸管系に見出され,また,その逆も知られてきたからである。ソマトスタチンはそのようなペプチドの一つであり,最初下垂体GH分泌を抑制する神経ホルモンとしてヒツジ視床下部より単離された1)が,脳内に広く分布することが明らかにされたのみならず,腸管系,とくに膵島にも存在することが知られた(表1)2,3)。脳におけるソマトスタチンニューロンは大脳皮質,大脳辺縁系,脳幹,脊髄などにも存在する4,5)ので,このものは向下唾体性ホルモンのみならず,神経伝達物質としてさまざまな神経機構に関係していると考えられる(図1)。
 本稿では,最初にソマトスタチンが抽出された視床下部におけるニューロン系に焦点をあてて,この物質の視床下部内における役割を考察したい。

サブスタンスP

著者: 沖充 ,   堂本時夫

ページ範囲:P.192 - P.196

 Substance P(以下SP)はウシ腸管の抽出物中に存在するアトロピン耐性の腸管収縮物質として発見されたが1),大塚ら2,3)の研究により興奮性神経伝達物質として注目されるようになった。SPの脳内分布についてはbioassay法によりある程度知られていたが4),脳の各部位のSP濃度の測定が可能になったのはLeemanらがSPの構造を決定し5),合成に成功し6),ついでその特異抗体を作り,それを用いてRIA法を確立したことに始まる7)。その後Hökfeltら8)はSPの特異抗体を用いて免疫組織化学的に脳内のSP(陽)性線維を観察することに成功した。その後,免疫組織化学とRIAの技術の発展によって,脳内のSPの分布,局在に関する新しい知見が次々と集積しつつある。本稿では主として免疫組織化学的研究法によって得られた最近の知見を整理し概説した。

VIP/PHIニューロン

著者: 岡村均 ,   井端泰彦

ページ範囲:P.197 - P.200

 Vasoactive intestinal peptide(VIP)はSaidとMuttにより1970年にブタ小腸より単離されたペプチドで,1976年にブタ脳よりも同一構造をもつペプチドが単離抽出され,脳腸管ホルモンとして確立された1,2)。近年,Tatemoto and MuttによりVIPと同じくglucagon-secretin族に属するペプチドで,27アミノ酸残基をもつペプチドが発見され,Peptide histidine isoleucine(PHI)と命名された3)。遺伝子工学的手法により,Itohらは,ヒトPHIであるPHMがprepro VIPに由来することを明らかにし,VIP,PHIが共通前駆体に由来することを証明した(図1)。
 VIPが神経伝達物質であることを示唆する所見は①高KによるVIPの放出増大がCa2+依存性であること,②125I-VIP結合部位がシナプス後膜に存在すること,③VIP投与により大脳皮質ニューロンが興奮することなどである5,6)。一方,共通前駆体から産生されるPHIも神経伝達物質候補の一つであり,脳内シナプトゾーム分画に存在し,高Kにより放出される事などが知られている。

コレシストキニン

著者: 遠山正弥

ページ範囲:P.201 - P.204

 1975年Vanderhaeghenら1)がヒトを含む動物脳にガストリン/コレシストキニン(CCK)様物質の存在を報告し,ついで1978年Dockrayら2)はヒツジ脳よりCCK-33のC末端8個のアミノ酸から成るCCK-8を単離精製した。CCK-8はCCK-33,39,54などの分子量の大きいものよりも多量に脳に含まれ,腸管ではこれが逆転する。

オピオイドペプチドニューロン

著者: 岡村均 ,   井端泰彦

ページ範囲:P.205 - P.209

 1975年Hughesらによる強力なオピオイド活性を有する2種類のペンタペプチド(methionine-enkephalin,leucine-enkephalin)のブタ脳よりの分離抽出以来α-endorphin,β-endorphin,dynorphin,α-neo-endorphinなどの内因性オピオイドペプチドが次々と発見された1)。近年の遺伝子工学的手法によりメッセンジャーRNAの相補性DNA(cDNA)のヌクレオチド構造から,オピオイドペプチドの前駆体のアミノ酸配列が解明され,現在ではオピオイドペプチドは前駆体の違いにより三系統に分離統合された2)。すなわち,Proopiomelanocortin(POMC)系〔β-lipotropin(β-LPH),α-endorphin,β-endorphin,γ-endorphin,ACTH,α-MSH,γ-MSHなど〕,proenkephalin A系(methionine-enkephalin,leucine-enkephalin,met-enkephalin-Arg6-Phe7,met-enkephalin-Arg6-Gly7-Leu8など),proenkephalin B系(dynorphin,α-neo-endorphin,β-neo-endorphin,rimorphin,leumorphinなど)である(図1)。

TRH

著者: 中井康光 ,   塩田清二

ページ範囲:P.210 - P.214

 TRHは視床下部ホルモンの中で最初に構造決定された,pGlu-His-Pro-NH2なるtripeptideである1,2)。TRHは脊椎動物の中枢神経系に広く分布している。視床下部に高濃度に存在し,下垂体門脈系血管を介して,TSHのみならず種々の下垂体ホルモンの分泌調節に関与していることが明らかにされてきている。また,TRHニューロンは視床下部以外の脳各部に広範囲に分布していることが,radioimmunoassay(RIA)法や免疫組織化学的研究によって証明されており,いろいろな中枢神経作用を有していることが薬理学的研究などで示されている。TRHニューロンの分布と構造ならびにTRHのホルモン作用と中枢作用について,われわれの観察所見を中心に文献的考察を加えて述べる。

LH-RH

著者: 塩谷弥兵衛

ページ範囲:P.215 - P.217

 LH-RHは下垂体前葉からのLH/FSHの放出作用を指標として視床下部から抽出された物質で,1971年にSchally1)のグループとGuillemin2)のグループとにより,それぞれブタおよびヒツジの視床下部組織から分離・精製されたが,その化学構造はいずれも同一で,10個のアミノ酸からなるペプタイドであることが判明した。この物質は間もなく合成され,またその特異抗体も作成されて,それを用いてのRIAや脳の免疫組織化学的研究も開始された。後者に関しては,視床下部,ことに正中隆起部におけるLH-RH陽性線維の証明は,どの動物種についても容易であったが,LH-RH陽性細胞の検出は意外に困難であって,1973年にモルモットではじめて証明されたが,動物種による差異が大きく,また同一種でも使用する抗体により陽性細胞の出現が影響されることなどもあって,実験成績の混乱がつづいた3)

GRF

著者: 徳善雅枝 ,   野口光朗 ,   大黒成夫

ページ範囲:P.218 - P.221

 GRFは下垂体前葉の成長ホルモン生産細胞(GH細胞)に働いてGHの放出をうながす。ヒトのGRFは44のアミノ酸からなるペプチドとしてGuilleminら1)やRivierら2)によって1982年に末端肥大症をもつヒト膵腫瘍から抽出,構造決定された(hpGRF)。これから1年おくれて,ラット視床下部からrhGRFが抽出された(Spiessら1983)3)。hpGRFとrhGRFとは構造が異なっている。形態学的にはこれらのペプチドに対する抗体を作って組織抗原と反応させた後,この結合物を標識,可視化することによって抗原の局在を知ることになる。したがって,用いる抗体によって細胞の局在が異なることがあるので注意を要する(図1)(Daikokuら1985)4)

バソプレシンニューロン系

著者: 井端泰彦 ,   川上冨美郎

ページ範囲:P.222 - P.226

 バソプレシン(vasopressin)は視床下部に存在する種種の下垂体前葉ホルモン放出促進/抑制ホルモンなどの発見よりも20年位も以前に発見され構造決定がなされたペプチドである1)。その化学構造は9個のアミノ酸鎖をもち,そのうち1位と6位のアミノ酸の間にS-S結合が見られる(図1)。このS-S結合に親和性のあるアルデヒドチオニンなどの色素によりバソプレシンおよびオキシトシン(oxytocin,この構造もバソプレシンに類似する)は光学顕微鏡的に染色される。また,多くの哺乳動物においては8位にアルギニンを含むアルギニンバソプレシンである。最近,バソプレシンを含む巨大分子である前駆物質(プロホルモン)の構造が遺伝子工学の手法により明らかになり,それらはバソプレシン以外にニューロフィジンⅡ(neurophysinⅡ)と呼ばれる蛋白と糖蛋白が含まれており,それぞれがprocessingにより切り離される(図2)2)
 バソプレシンは従来,抗利尿ホルモンとして視床下部室傍核,視索上核の神経細胞で産生され,それらのニューロンの軸索中を下垂体後葉に運ばれ,神経終末より毛細血管中へ放出され腎臓の遠位尿細管や集合管に作用すると考えられていたが,その後,中枢神経系のいろいろの領域に分布することが明らかとなり,その生理的意義についても論じられている。以下脳内局在および生理的意義についてその概略を述べる。

ニューロテンシン

著者: 遠山正弥

ページ範囲:P.227 - P.229

 ニューロテンシン(NT)は1973年Leemanら1)によりウシ視床下部からサブスタンスPを単離精製する過程で発見された13個のアミノ酸から成るペプチドで,その特有な生物活性部位はC末端の5〜6個のアミノ酸にある。
 高力価のNT抗血清を用いてRIAおよび免疫組織化学により脳内に幅広い分布を示すことが示され2-5),またその分布とNTの結合部位の分布の類似性と相伴い,NTの神経修飾物質としての役割が推定されている6)

連載講座 哺乳類の初期発生

受精能獲得

著者: 三宅正史

ページ範囲:P.231 - P.238

 ヒトの体外受精がわが国を含めて盛んに行われるようになり,哺乳動物の受精現象について広い範囲の人々に関心が持たれるようになってきた。また,哺乳動物の受精現象に関する多くの研究が行われ,実験動物以外の家畜やイヌ,ネコ,サルなど多くの哺乳動物において成功例が報告されている1,2)。しかし,基礎的な研究にいたっては,いまだ未知の部分が多く,これからとりあげる受精能獲得(Capacitation)現象についても種々の考え方が提唱されているが,対象実験動物の違いにより異なった現象や結果がみられる。また,多くの哺乳動物では受精能獲得とそれに続いて起こる先体反応(Acrosomereaction)との間に明確な区別をつけにくいことから,受精能獲得についてある程度理論的に論じることができるのは,現在のところゴールデンハムスター,guineapigとマウスに限られているといっても過言ではない。

解説

樹状突起棘の機能

著者: 川人光男

ページ範囲:P.239 - P.245

中枢のある種の神経細胞では,樹状突起上に多数の棘状の構造があり,樹状突起棘(dendritic spine;以下スパインと略称)と呼ばれている。大型の細胞は数千〜数万のスパインを持つといわれている(図1)。Gray1)は電子顕微鏡の観察によってスパインの頭の上にシナプスが形成されていることを見出し,さらにスパインに特有の細胞内器官を発見して,それをスパインapparatusと名づけた(図2)。スパインの形態と大きさは,神経細胞により,あるいは同一の細胞内でもさまざまである。標準的な値としては,スパインの頭と茎を含めた長さが,0.5〜数μm,茎の直径が0.05〜1μm程度である。
 スパインの生理的機能に関して古くからさまざまな可能性が考えられてきた。中でもRall2),Tsukahara & Oda3),Crick4)らによって提出されたスパインの形態変化がシナプス可塑性の機構であるという,"スパインの可塑性仮説"は非常に魅力的で多数の研究者の関心を引きつけ,その結果,スパインに関する実験的・理論的研究が進歩した。仮説主導で研究が発展した良い例であろう。

コミニケーション

友への手紙—米国神経科学会に参加して思うこと

著者: 塩井純一

ページ範囲:P.246 - P.248

 1985年10月20日から25日までテキサス州ダラスにて神経科学会(Society for Neuroscience)の第15回年会が開かれました。参加者数は約8千でカルフォルニア州アナハイムで開かれた前年('84年),マサチューセッツ州ボストンで開かれた前々年('83年)とあまり変化なく,ほぼ定常状態に達した模様です。しかし発表演題は実に5千余りで,他の学会に比べ発表数/参加者数の割合がきわめて高く,この分野の相変らずの隆盛ぶりを象徴しているように思われます。2年前,初めてこの学会に参加した時には,その多彩な(multidisciplinary)アプローチぶりに圧倒される想いでしたが(文献1),今回は生化学だけでなく電気生理学,遺伝子工学,解剖学・組織化学等々に対する私の理解度も少しは深まり,したがってそれだけ広く関心をもっていろいろ見聞できたように思いますが,どういうわけか理解度の上昇とは裏腹に衝撃度といいますか,印象度の方は年々弱まっていくようで,もう年のせいなのかと当惑しております。その私個人の感受性の減弱を割引かねばなりませんが,Kandel一派のアメフラシ(軟体動物の一種で神経細胞の数が少ないだけでなく細胞自体が大きい)を用いた壮麗な仕事(文献2と3参照)も一段落したのではないかというのが私の一番の印象です。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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