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特集 脳の化学的トポグラフィー
GABA
著者: 木村宏1
所属機関: 1滋賀医科大学解剖学教室
ページ範囲:P.176 - P.179
文献購入ページに移動 γ-アミノ酪酸(GABA)が哺乳類の神経系に存在することは,1950年にはじめて報告された1,2)。このアミノ酸およびその合成酵素L-グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)が,主として中枢神経系に存在し,他の臓器に認められないという事実3)が明らかになるにおよんで,次第に神経化学者の興味をひき,GABA代謝経路の解析に力が注がれた。現今のところGABA産生の主経路は,GADを介するグルタミン酸の脱炭酸反応によるものと考えられ4),この点GABAはアミンの一種とも言える。GABAの分解は,GABA-アミノ基転移酵素(GABA-T)によるコハク酸セミアルデヒド(SSA)への転化であるが,多くのアミノ基転移反応と同様にα-ケトグルタル酸からグルタミン酸への転化と共役して起こる。生じたSSAは,神経組織に豊富に存在するコハク酸セミアルデヒド脱水素酵素5)によりTCA回路の一要素であるコハク酸になり,最終的にH2OとCO2に分解されることになる(図1)。したがって,アミノ酸プールの役割を担うグルタミン酸と,糖代謝の主たるTCA回路との間を橋渡しする「GABA shunt」と呼ばれる経路が成立し,脳内物質代謝にも関与している。
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