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文献詳細

雑誌文献

生体の科学37巻3号

1986年06月発行

文献概要

解説

樹状突起棘の機能

著者: 川人光男1

所属機関: 1大阪大学基礎工学部生物工学科

ページ範囲:P.239 - P.245

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中枢のある種の神経細胞では,樹状突起上に多数の棘状の構造があり,樹状突起棘(dendritic spine;以下スパインと略称)と呼ばれている。大型の細胞は数千〜数万のスパインを持つといわれている(図1)。Gray1)は電子顕微鏡の観察によってスパインの頭の上にシナプスが形成されていることを見出し,さらにスパインに特有の細胞内器官を発見して,それをスパインapparatusと名づけた(図2)。スパインの形態と大きさは,神経細胞により,あるいは同一の細胞内でもさまざまである。標準的な値としては,スパインの頭と茎を含めた長さが,0.5〜数μm,茎の直径が0.05〜1μm程度である。
 スパインの生理的機能に関して古くからさまざまな可能性が考えられてきた。中でもRall2),Tsukahara & Oda3),Crick4)らによって提出されたスパインの形態変化がシナプス可塑性の機構であるという,"スパインの可塑性仮説"は非常に魅力的で多数の研究者の関心を引きつけ,その結果,スパインに関する実験的・理論的研究が進歩した。仮説主導で研究が発展した良い例であろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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