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文献詳細

雑誌文献

生体の科学37巻4号

1986年08月発行

文献概要

特集 細胞生物学実験マニュアル 核・染色体分析

DNA顕微螢光測定法

著者: 藤田哲也1

所属機関: 1京都府立医科大学病理学教室

ページ範囲:P.297 - P.299

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 ■ 概要
 DNA顕微螢光測定法は,pg(1兆分の1g)のオーダーの物質を,螢光を利用し,in situで顕微測光によって定量する技術をDNAに応用するものである。この方法の開発の歴史をたどると二つの大きな意義があったことがわかる。その一つは,超微量の物質を光学的に正しく定量するために,どのような光学装置が必要であり,どのような螢光物質を用い,どのような条件で測定すればよいかというハードウエアとソフトウエアの知識が集ったことであって,この基礎の上に,Fura2のような螢光色素を用いる生細胞内Ca++分布のリアルタイムの定量1)や,FITC標識dextranを用いる細胞内pHのモニタリング2)のような技術が発展した。螢光プローブの種類によって,このような細胞内螢光定量法はこれからさまざまの細胞機能解析に応用されていくであろう。また,第二の意義は,"ニューロンのDNAが生後の経験の集積とともに増量していくという学説"に徹底的な吟味が行われ,脊椎動物の中枢神経系ではそのような増量はないという結論がえられた3)ことである。このさい,成熟した脳の中でDNA合成を行うのは(間葉系細胞は別として)グリア細胞のみであることが同時に明らかになった。したがって,3H-thymidineのオートラジオグラフィを行うことができないヒトの脳においても,グリア系細胞の増殖をみる方法として用いられるようになっている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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