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特集 細胞生物学実験マニュアル 細胞運動・細胞骨格分析
ゲル・ゾル化の測定法(落球法による粘度測定)
著者: 大瀧徹也12 浅野朗1
所属機関: 1札幌医科大学がん研究所生化学部門 2現所属:武田薬品工業(株)中央研究所
ページ範囲:P.346 - P.347
文献購入ページに移動アクチン結合性タンパク質を研究するうえでの基本的な戦術の一つは,これがアクチン溶液の粘度に及ぼす影響を調べることである。この粘度の測定に際しては,とくにshear stressについて考慮しなくてはならない。たとえばアクチンゲル化因子の作用によってアクチン線維の会合体が形成されていても,測定時に高いshearstrcss(剪断力)がかかるならば,会合体は破壊され,正当な効果を引き出すことができなくなる。したがってこの場合にはshear stressの小さい条件で測定のできる粘度計が必要である。この条件を満足し,かつ安価で簡便な方法が落球法粘度計である。これは,'70年代の後半にPollardらによってはじめてアクチン研究の分野に用いられ1),それ以来急速に普及した。本項ではこの落球法粘度計について概説する。
実験方法は簡便である。試料を満たした毛細管中に小球を落下させ,落下速度から粘度を求めればよい。落下を始めた球が加速をしていくのと同時に,球がうける動摩擦力が増大していき,定速運動状態に達する。この時,球が流体(試料)に及ぼす力(重力)と試料が球に及ぼす力(主に,浮力と動摩擦力)が釣り合う。動摩擦力は6πηu(ηは粘度,uは落下速度)で表わされ,また重力と浮力はη,uについて零次であるから,ηと1/uの間に比例関係が成り立つ。
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