icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学37巻5号

1986年10月発行

文献概要

連載講座 哺乳類の初期発生

初期発生と糖転移酵素

著者: 古川清1

所属機関: 1東京大学医科学研究所生物有機化学研究部

ページ範囲:P.518 - P.525

文献購入ページに移動
 卵黄の中で形のない状態から,鶏胚が徐々に出現してくるのを最初に観察したのは,おそらくAristotleであろう。それから2000年余り経た今日では,この一連の形態形成は細胞の移動と接着によることが明らかになっている。したがって,細胞が細胞と,または細胞間質と特異的に接着する分子機構を解明することは,形態形成の中心的課題である。
 一方動物細胞では,発生に伴い胚細胞表面複合糖質の糖鎖構造が著しく変化することは,微細な構造変化をとらえる種々のレクチンやモノクローナル抗体を用いた研究で,明らかにされている1,2)。同時に,これらのレクチンや抗体で細胞表面を処理すると,胚発生が阻害されたり逆に胚の分化が誘導されたりするので3-5),初期発生において胚細胞表面に発現される複合糖質糖鎖が重要であることは明白である。これらの現象が,各発生段階で特異的に発現される遺伝子とその産物により調節されていると考えられるが,その遺伝子産物の実体については,ほとんどわかっていない。本稿では,これらの分子の一つが糖転移酵素である可能性を探りつつ,初期発生における転移酵素の意義について考察してみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?