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文献詳細

雑誌文献

生体の科学37巻5号

1986年10月発行

文献概要

解説

蛋白質分子の重合の理論—Ⅱ.速度論

著者: 大沢文夫1

所属機関: 1大阪大学基礎工学部生物工学科

ページ範囲:P.526 - P.531

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 I.重合過程
 以下に蛋白質分子の重合体形成過程,すなわち重合の平衡状態あるいは定常状態成立に至る過程についての理論の概略を述べる。蛋白質分子の重合現象が気液凝縮や結晶化と似ていることは平衡状態の解析によって見出された。同じことは重合体形成過程の解析によっても明らかにされた。凝縮や結晶化では一般に,液体の小滴や結晶の小さな粒の形成される過程がネックとなり,ひとたびこれらが形成されるとあとの成長は速やかに起こる。同様に,蛋白質分子の重合は,核形成(Nucleation)と生長(Growth)の2段階からなる(図8)。全分子がモノマーに分散していた状態から出発して,環境を変えて重合を開始させる。核がi0コのモノマー分子によって形成されるとする。分散しているモノマー分子の数濃度をC1として,核の自発的形成による核の数濃度mの増加はdm/dt=+kC1i0……(21)とかけるとする。kは核形成の速度定数である。形成された核にモノマー分子が順次結合して重合体は生長する。重合体に組みこまれたモノマー分子の総数濃度Cpの増加はdC0/dt=-dC1S/dt=+km・C1……(22)とかけるとする。核形成のためのモノマー分子の減少は生長のためのそれに比べて非常に小さい。kは生長すなわち重合の速度定数である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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