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文献詳細

雑誌文献

生体の科学38巻1号

1987年02月発行

文献概要

特集 医学におけるブレイクスルー/基礎研究からの挑戦

癌:細胞分化の分子的研究から

著者: 村松喬1

所属機関: 1鹿児島大学医学部第二生化学教室

ページ範囲:P.21 - P.25

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 ここ数年間の癌研究の進展はめざましい。多くの癌遺伝子が単離され,その産物と細胞の増殖制御機構との関連が明らかにされてきた。最近になると,細胞の癌遺伝子は発生分化の特定の段階に強く発現されることがわかり,癌遺伝子の産物は発生分化の機構にも密接に関与するらしいと考えられるようになった。また,モノクローナル抗体法によって次々に見出されてきた腫瘍関連抗原も,調べられた限りほとんどすべての場合,胎児期の細胞に検出されている。癌化と分化の表裏一体の関係が,新しい技法の導入によって,改めて強く認識されるに至ったと言えよう。癌細胞の異常な振舞の多くは,分化途上で停止した姿として理解できると思われる。とすれば,細胞増殖にのみ力点を置いてスクリーニングされた癌遺伝子だけでは,癌の分子生物学的理解には不十分で,分化という視点からスクリーニングされた"分化遺伝子"とも言うべき他の遺伝子群を組み入れたストーリーが必要とされよう。分化の観点から癌を理解できれば,"分化によって癌を治す"という古くからの夢が現実のものとならないであろうか。本稿では,以上のような立場から,"分化遺伝子"を追い求める研究の現状を紹介し,展望を試みる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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