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細胞内染色法の新技術—(Ⅱ)ジアミノベンジジン光酸化法による螢光色素注入細胞の形態研究
著者: 田内雅規1
所属機関: 1生理学研究所神経情報部門
ページ範囲:P.235 - P.239
文献購入ページに移動 細胞内染色に用いられる螢光色素の中でもルシファー色素は多くの利点を備えている。ルシファー色素は分子量が小さいため細い電極からでも容易に注入できるし,細胞内での拡散も良く,また固定などの処理を施さずに励起光を照射するだけで注入細胞を直接観察できることなどから顕微鏡直視下での細胞内染色に適したものであることを前回述べた。しかし,ルシファー色素を使用する際の問題点として,早い螢光褪色によって長時間を要する定量的な形態解析に耐えないこと,電子顕微鏡による観察ができないことなどがありこれらは大きな制約となっている。しかし,近年Marantoらによって開発されたジアミノベンジジン(3,3'-diaminobenzidine tetrahydrochloride,DABと略)を用いる光酸化法はルシファー色素のこのような欠点を克服するものとして注目される1)。すなわち,微小電極を用いて巨大ニューロン内にルシファー色素を圧注入した直後,DAB溶液に浸して強い青色励起光の照射を行うと,ルシファー色素の褪色過程に伴いDABの光酸化反応が起きるので,ホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)注入により標識した細胞と同様に取り扱うことができるというのである。ただMarantoの報告ではDAB光酸化反応には多量のルシファー色素を注入する必要があるため,小型の細胞へも適用できるかどうかが疑われる。
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