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文献詳細

雑誌文献

生体の科学38巻4号

1987年08月発行

文献概要

特集 視覚初期過程の分子機構

桿体外節における光情報伝達機構の理論モデル

著者: 市川一寿1

所属機関: 1日本アイ・ピー・エム(株)大和研究所

ページ範囲:P.276 - P.283

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 外部環境の情報を獲得する機能としての視覚は,生物が持っている重要な感覚の一つである。脊椎動物の視覚に対して光刺激として入力された光量子は,桿体細胞の外節にある視物質によって吸収され,その発色団を光異性化する。この反応がトリガーとなり,一連の生化学反応に変化がひき起こされ,その結果として外節形質膜のナトリウムイオン透過性が減少し,過分極性の電位応答が発生する1-4)。桿体外節には,動物種によって若干異なるが約2,000枚の円板状の構造があり,この円板は外節の形質膜からは切り離されている。視物質ロドプシン(Rh)は円板膜に内在性タンパク質として存在するので,ロドプシンの光吸収という出来事を形質膜に伝えるには,何らかの伝達物質が必要である。その候補として,カルシウムィオン5)とcGMp6-8)が注目されてきた。最近,cGMPが直接外節形質膜のイオンチャネルの開閉を制御し,ナトリウムイオン透過性を変化させていることが実験的に示され9),cGMPが伝達物質としてほぼ認められつつあると言えよう。
 これまでに桿体外節における光情報伝達の分子機構に関する多くの実験データが蓄積され,定量的モデルを構築できるようになってきた。このようなモデル化により,光情報伝達機構の理解が一層進展することが期待される。本稿ではこれまでに発表されたモデルを概観し,今後の方向を展望する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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