特集 視覚初期過程の分子機構
視細胞のイオンチャンネル
著者:
中村整1
所属機関:
1Yale大学医学部生理学教室
ページ範囲:P.284 - P.290
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脊椎動物の視細胞では視物質による光受容の情報は細胞内トランスミッター(第2メッセンジャー)を介して形質膜のNaチャンネルに伝えられると予想され1),視物質1個あたりの腿色に伴い最低100個の第2メッセンジャーが細胞質に放出され,それに対応するNaチャンネルが閉じると言われてきた2)。この第2メッセンジャーの同定は約15年にわたり視覚情報変換機構の中心的課題であったが,最近数年間で吸引電極やパッチ電極の導入により(図1)急速に研究が展開した。その結果視細胞外節の形質膜にcGMP感受性コンダクタンスが発見され3),cGMPの光による減少がメッセンジャーとして作用することが明らかとなった。一方非常に有力だったCaイオン=第2メッセンジャー説(Ca仮説)は否定されたが,CaイオンはcGMP感受性コンダクタンスと強い相互作用をすることが確かめられ,細胞内Caの重要さが再認識されようとしている。
本稿ではまず手短に視細胞の光応答とそれに関わるいろいろのチャンネルなどについてふれ,その後現在もっともよく研究されているcGMP感受性チャンネルについてやや詳しく述べたい。しかし紙面の都合で第2メッセンジャーとチャンネルの関わりについて,あるいは内節のチャンネルなどについて重要な実験を十分紹介できないので,本特集の他の稿や,他の総説4-8)で補っていただければ幸いである。